アスペルガー社会人のBlog

『夜と霧』 V.E.フランクル

アウシュビッツなどの強制収容所で強制労働を強いられた
ユダヤ人精神科医の回想記録。
極限状態に置かれた人間の心理と行動を学びたく手に取った。

本書から学べることは大変多く、
不朽の名著の名に恥じない名作だが、
今この非常事態に置かれた自分達にとって
本書からの最も大切な学びは
未来に対する目的を持って生きる事、だと感じている。

少々長くなるが、More以下に印象に残ったフレーズを記しておきたい。

夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録
V.E.フランクル 霜山 徳爾

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自己放棄及び自己崩壊と、他方未来体験の喪失との間に
どんなに本質的な連関が存するかが、
私の目の前で一度劇的に演ぜられたことがあった。
私の所の囚人代表は
-かなり知られていた外国の作曲家及び脚本家であったが-
ある日私にそっと秘密を打ち明けた。
「ねえ、ドクター、私は君に話したいことがある。
最近奇妙な夢を見たのだ。
ある声が聞こえて私に何でも望んでよいと言ったのだ……
つまり知りたいことを何でもいえば、
その声はそれに答えてくれるというのだ。
ところで私が何を訊いたかと思うかね、
私は”私にとって戦争がいつ終わるか”を知りたかったのだ。
ドクター。”私にとって”という意味が判るかね、
つまりわれわれがいつ収容所から解放されるだろうか、
従っていつわれわれの苦悩が止むかということを知りたかったのだ。」
彼はいつその夢を見たのかと私は尋ねた。
「1945年の2月だ。」と彼は答えた。(当時は3月の始めだった。)
そして夢の声は君に何と答えたのか、と私はさらに尋ねた。
小さな声で彼は私に囁いた。「3月30日…」

この仲間Fが彼の夢について私に語った時、
彼はまだ希望に満ちており、
彼の夢の声の言ったことは正しいであろうと確信していた。
一方その声によって予言された期限はどんどん近づいてきた
-そして軍事情勢について収容所について入ってくる情報によれば、
戦線が実際3月の中にわれわれを解放してくれる可能性は
ますます少なくなっていくようであった。
すると次の事が起こった。
3月29日にFは突然高熱を出して発病した。
そして3月30日―すなわち予言に従えば戦争と苦悩が
「彼にとって」終わる日に―Fはひどい譫妄状態に陥り始め、
そして終に意識を失った。
…3月31日に彼は死んだ。彼は発疹チブスで死んだのである。

勇気と落胆、希望と失望というような人間の心情の状態と、
他方では有機体の抵抗力との間に
どんなに緊密な連関があるかを知っている人は、
失望と落胆へ急激に沈むことがどんなに致命的な効果を持ち得るか
ということを知っている。
私の仲間のFは
期待していた解放の時が当たらなかったことについての深刻な失望が
すでに潜伏していた発疹チブスに対する
彼の身体の抵抗力を急激に低下せしめたことによって死んだのである。
彼の未来への信仰と意志は弛緩し、彼の肉体は疾患に仆れたのであった。
…かくして結局彼の夢は正しかったのである。
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by abcde354 | 2011-03-28 00:57 | 読書 | Trackback | Comments(4)
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Commented by レイモンド at 2011-03-28 22:00 x
とうふさんの記事を読んで
今日、注文しました。
早く読みたいです。
まだ読んでいないですが、紹介してくださってありがとうございます。
Commented by ダリュ at 2011-03-29 00:28 x
初めてコメントします。

アスペルガーかも?しれない者です。

お読みになったかもしれませんが、フランクルの「それでも人生にイエスと言う」もすばらしいです。

頑張ってるのに人の気持ちがよくわからず、亡くなった両親ともついにわかりあえなかった。生きるって大変だな、どうして生きなきゃいけないのかな、ってぐったりすることの多い私ですが、どんな状況下においてでも人は人生に「イエス」と言えるのだ、と教えられました。

とうふさんのブログ大好きです。またお邪魔します。
Commented by めろんぱん at 2011-03-29 20:05 x
この本は、高校の時に読みました。私が鮮明に覚えている文章は、次のようなものです。「木は私に語りかけます。『私はここにいる。私はここにいる。私はいるのだ。永遠の命だ。』」死にかけた若い女性が木と会話する話をフランクルに打ち明けた言葉だったと思います。当時の私の心を揺さぶりました。
Commented by abcde354 at 2011-04-18 23:16
皆様、コメント有難うございます。心を揺さぶる名著なのだなとコメント拝見して改めて感じました。『それでも人生にイエスと言う』も買ってしまいました。読んでみます。どうも有難うございます。
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成人アスペルガー症候群当事者とうふ(2006年確定診断済)が綴る、アスペルガー的社会人生活。
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