アスペルガー社会人のBlog

2017年 09月 18日 ( 1 )

『ヒルビリー・エレジー』 J.D.ヴァンス

トランプ大統領の支持層である「白人労働者層」を理解する上で有益な本、
と池上彰氏が紹介しているのを聞き読み始めたのだが、衝撃を受けた。
アメリカでさえ、一つの階層から違う階層に移動することが如何に難しいか、
が書かれていたからだ。

著者は白人労働者層(ヒルビリー)の子供に生まれながら
イエール大学ロースクールを卒業して弁護士になった人物で、
本書は著者の自伝的書物である。

前半では、高校までのヒルビリーとしての生活が丁寧に描かれる。
ドラッグ、離婚、失業が当たり前の世界、それらに伴う希望無き生活。
将来への不安はドラッグや失業を益々悪化させ、悪循環となる。

後半は、海兵隊生活を経て、大学、ロースクールでの華やかな生活、
そして上流階級のヒルビリーとの文化的差異に伴う葛藤が描かれる。
ディナーに9本ものフォークとスプーンが並んでいて使い方が分からなかったこと、
スパークリングウォーターとは炭酸水なこと、
面接にはスーツを着ていく必要があること、といった日常の問題から、
幼少期の虐待の後遺症といった深刻な問題まで描かれる。
上流階級の文化になじもうとする著者の血のにじむ努力が伺える。


そして、本書を読んで、自分が何故”ここに”いるのかを理解出来た気がした。

公営住宅(即ち生活保護受給者世帯)密集地域に自分は生まれている。
自分は公営住宅には住んでいないが、
所得レベルはほぼ同等だったと後に聞いた。

公立幼稚園も公立小学校も公営住宅に住む友達が多く、
心優しい友達達に助けられることが多かった。

が、勉強が出来たため中学受験を勧められ、私立の進学校に合格する。
そこは親の職業が医者か弁護士が8割を占める、超上流階級の学校だった。
何の準備もなく入ってしまった自分はその文化に馴染めず、中高の6年間を送る。
当然成績も下降傾向で、真ん中位の成績を取れれば良い方だった。

そして、大学受験では東京大学に落ち、
現役で私立の滑り止めの大学に入った。
正直東京大学に入れなければ落ちこぼれな高校だったが、
当時の自分には関係なかった。
何故か?ここに文化的差異による諦めが存在したのだと思う。
上流階級の同級生は、一浪して再度東京大学を受けていた。
一方、上流階級ではない同級生は、現役で滑り止めの大学に入っていた。
「上流階級だからと言って東大に入れるわけではない、
しかし上流階級でなければ東大には入れない」
という見えない壁があったように思う。

入った大学では勉強せずとも大体の科目でAを取れた。
自分には易しすぎたのだろう。
一方で、数学や理科を勉強してきていない私立文系の同級生が
「自分は頭が良い」と勘違いして大きな顔をしていた。
高校で東大模試一桁取るような人を見てきた自分にとって、
私立文系の同級生など馬鹿以外の何でもなかった。
しかし今になってみれば、それがその大学の「文化」で、
自分は相変わらず馴染めなかったのだと思う。

ただ、努力せずともAを取れる環境だったことが、就職活動で災いする。
大学で頑張ったことを何もアピールできない状態になってしまったのだ。

当然就職活動では失敗して、名もなき会社に拾われることになる。
そこは、公立小学校での中位レベルの子が集まる会社といえよう。
大学の失敗を踏まえ、「文化の違い」があることは予想していたが、
文化の違いは想像以上にキツかった。
中学から大学までの10年間で、
馴染めないながらも身についてしまっていたものがあった。
そして中位レベルの子達は、勉強が生活の中心だった自分とは異なり、
世の中を上手く渡る対人関係術を身につけていた。
対人関係術が圧倒的に足りない自分は、落ちこぼれ社員となってしまった。

それでもこの会社で勤め続けられているのは、
社が出身の幼稚園、小学校と似た文化だからではないかと思う。
最近知ったのだが、社内に、幼稚園のクラスメイトがいた。
最初の文化的階層に戻ったのだ。


本書を読んで、
アスペルガーの環境適応には「文化的階層」という側面も
考える必要があるとわかった。
子供さんが今いる「文化的階層」、
そしてこれから入ろうとする学校の「文化的階層」
をよく見て、新環境への準備してあげると良いのではないかと思う。


ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
J.D.ヴァンス 関根 光宏

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by abcde354 | 2017-09-18 10:07 | 読書 | Trackback | Comments(3)


成人アスペルガー症候群当事者とうふ(2006年確定診断済)が綴る、アスペルガー的社会人生活。
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